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インサイドアジアでは、在中18年目の作家・谷崎光とアジアの精鋭インサイダーたちが”本当”をお伝えします。

中国で怖いのはファーウェイだけではない。共産党員8000人が最前線で働くあのIT企業の裏側(下)

 

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タオバオでさっそく売られるKAWSのコピーTシャツ。争奪戦はコピー生産のためか?



 

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ジャック・マーは資産を早くにシンガポールに設立した慈善組織に移していると言われているが、あのぐらいになるとこれからもう1兆円儲けるとかに、あまり興味はないのではないかと思う。

 

それよりも自分が育ててきて、13億の国民的インフラとなった企業がどうなるか。

 ついてきてくれた従業員への責任もある。引退は党の支配と折り合いをつける方法だったと思うのは、ちょっとセンチメンタルすぎるだろうか。

 今、中国の金持ちは皆、外国に逃げ出しているのである。

 

 もちろんアリババにはソフトバンクはじめ、いろんな外国資本が入っているが、所詮、中国の会社。党に逆らったら何もできなくなる。

 

 アリババのアリペイ(支付宝)は、ジャック・マーとアリババの社員たちが、一所懸命育ててきたシステムである。急にあそこまで便利になったわけではない。

 

 私はタオバオの最初からのユーザーだが、最初は、銀行や郵便局まで行って振り込んでいたのである。

 

 20元(350円)のものを買って、振込代が2元(35円)。

 

当時の銀行はものすごく並ばないとだめで、また地方だと連携していない銀行や、お金を送っても届かない!!!金融機関がある。

 

返品や不良品が発生したときの返金や値引きはどうするのか。また中国はそういうトラブルが多い。

 

 せっかくネットで買い物をしたのに、支払いがものすごく大変だった。

 

 初期、ジャック・マーが銀行に行き、対応を申し込んだら、けんもほろろに追い返された、というのは有名なエピソードである。

 

その後、銀行や拉卡拉(ラカラ)というコンビニに併設された機械に銀行カードを通し、チャージNOを買ってお金をチャージできるようになった。

 

 しかし当時の中国で、ネット商に自分のお金を置いておくなんて危険なこと、外国人どころか中国人も誰もやらず私も買い物と同額の最低金額だけチャージしていた。

 

それを大きく変えたのが、余額宝という、タオバオの独自ファンドである。

 

 確か初期は7〜8%を超える利率で、タオバオの信用が徐々に付いてきたのもあり、こうなると一気に1000万円とか預けるユーザーが続出した(注:外国人は今も昔もできません)。

 

 やがて銀行カードと紐づけになり、スマホが出てきて、QRコード支払いが始まり、本当に便利になった。つられて銀行の振込もほぼ無料になった。

 

“あー、運賃が足りない。あと2元”“はい、送るね”。“あ、これ返金して!”スマホでピッ、というのが、一銭の手数料もかからず北京と雲南省の山奥とで可能なのである。

 

◆政府は民間企業を

◆利用してきた

 

 実はこういう技術開発は、古くからの社員や養わなければならない官をたくさん抱えた国有企業では、やりにくい。

 

 

 そこで、民間企業を利用してきたともいえる。

 

 初期、銀行に冷たくあしらわれたとはいえ、こういう金融業務は政府の許可と思惑なくしては、アリババのような民間企業がやることはできない。

 

 巨大企業に育っていきつつあるアリババを見ながら、政府の誰かが考えたのだと思う。

 

 

アリババは、タオバオを通して今はほぼ全国民の消費情報と住所、金融情報を押さえている。我々の金儲けだけでなく、人民の管理にも大いに利用できる。

 

現在、アリババには社内にも警察組織があり情報を提供していると、これはウォールストリートジャーナルが2017年12月4日に報道している。

 

もちろん投資もしている。アリババの上場について太子党の関与が一時、報道され、江沢民派だと話題になったが、私はそういうのはもう多少古い話だと思う。

 

 

日本では派閥争いがよく言われるが、“革命の勇士”、つまり武力でこの場所を獲った人々の子孫は所詮、皆さん、お友達。

 

 

取り合ったりはしているが、結論冒頭の“すべては党が管理する”なのである。

 

 父親が深センで港湾関係の幹部をしていたこともある党員で、自分も大学時代に入党しているテンセントの創業者、馬化騰はアジア有数の金持ちになった。

 

 そもそも深センというは、80年台から共産党と軍が自分たちの権利をお金に変えていた共産党の経済実験都市である。

 

 

◆それがすなわち

◆『中国の夢』(泣)!

 

 杭州で、貧しい家に生まれて起業したアリババのジャック・マーは引退した。

 

やはり貧しい家に生まれ、北京の中関村で働いて、不良品や偽物があまりにも多いことに疑問を感じ、偽物なし、配達のすり替え!なしを売り物に起業し大成功した京東の劉強東は、アメリカでレイプ容疑をかけられて逮捕された。

 

 彼には、ミルクティー小姐というニックネームの、高校時代からネットで大評判だった超かわいい奥さんと小さな娘がいるのだが……。女性尊重を日頃主張する私だが、これはハメられたんじゃない?に一票である。結局不起訴になった。

 

中国のネットの世論誘導も非常に奇妙。真偽ははっきりしないが、株はダダ下がりで凄まじい額のお金が蒸発し、経営者としての責任は問われるかもしれない。

 

現在、すでに京東の最大の株主はテンセントである。

ただし議決権はやはり大株主である劉強東が約8割もっている。ただし、そのテンセントも今年の夏に、突然ゲーム規制がかけられ、株価が下がった。

 

以前、今をときめく十数名の中国IT長者たちが集まって1卓で食事をしている写真がネットに流れ、「なんてゴージャスな!」と話題になったが、そのウラで様々な死闘がくりひろげられていたんだろうな……。

  

 皆、この時代の中国に生まれ合わせ、才を持ち合わせ、死ぬほど働いて、中国人の生活を本当に豊かに変えた企業人たちである。

 

 幸いにも20年近く中国に暮らし、その過程をつぶさに見てきた。

 

 特にアリババのジャック・マーと京東の劉強東の2人については、その夢の終着駅がこれか、という思いがある。

 

 

「がんばってきたことがすべて一場の夢という感じ。あんまりじゃないか」と中国人の友達に言ったら、

 

 

「いや、だからそれがすなわち『中国の夢』だって!」と、ジョークを交えて返された。

 

 

“中国の夢”というのは習近平たちが唱えている美しい未来である。その美しすぎる未来に人民が逆らおうにも、すでにAI顔認証で包囲されている。

 さからえば、日頃使うスマホから顔写真をインプットされたハエほどのドローンがひゅーんと飛んできて、どこに逃げようと額をバキューンと撃ち抜く……、日も遠くない。

 

あ、もう始まってる?

 

 

 そして中国にさからえなくなるのは、人民だけではない。

 

 日本企業も、一般消費者だけではなく、中国企業が大きなお得意様になった。

 

メディアは、今度は中国企業にも目がキラーン。取材しても読者の食いつき、いいし……。

 

日本進出を目論む中国企業は、それを逆手にとるだろう。

 中国現地にいる日本の官僚は、日本企業への天下りの手土産に、中国の官と中国企業とのコネをつけるのにいそがしい。

 日本官僚の派遣先として、今は中国は大人気だそうで、中国大使館は、今や世界の日本大使館で一番人数が多いとか。

  

で、現地の日本人の彼らがこぞってやっているのは、日本はもうダメと見切って、自分の子供に、英語と中国語を徹底的に仕込むこと。

培った中国コネを活かした明日の中国的ファミリービジネスを目指して……。

 

本当に怖いのは、日本で、ふと気がつけば中国企業のサービスに首まで浸かって、取り残される皆さんかもしれない。

 

 

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